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2011年02月 アーカイブ

中世の旅とこころ

『新古今和歌集』の旅の歌としてよく知られているのは、藤原定家の


旅人の袖吹きかへす秋風に夕日さびしき山のかけはし (953)


・・・でしょう。


秋風に吹かれながら夕日を浴びて、心ぼそい山のかけはしを渡ってゆく旅人の姿が印象的です。


「旅人の」ととらえることによって、作者はその旅人を眺める立場に立っています。


そのことからも察せられるように、これは「旅歌とてよめる」という題によって作られたものであり(建久7年9月18日内大臣家)、作者自身は都の貴族の邸宅にあってのものです。


・・・しかし、そこに集った人々は、この一首を味わうことによって、それぞれの脳裏に旅の心を抱いたのでしょう。


気軽には行くことのできぬ旅であるだけに、憧憬をこめて。


じっさい、『新古今和歌集』の旅の歌というのは、ほとんど題詠の「旅のこころ」をテーマにするものです。


それは中世和歌すべてに共通してみられるところでもあります。


このことは考えてみれば当然でもあるでしょう。


現在のような旅館があるわけでもなく、交通機関とて不便きわまりないものでした。


『万葉集』では「草枕旅は苦し」(4406)と故郷の人に伝えて欲しいというのが見られましたが、中世においてもそれほど発展していなかったのです。


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